ハードボイルド文学を読む時、あらすじを覚える必要はない。事件の仕掛けより、主人公がどこで線を引いたかを見てほしい。何を望み、何を守り、何を我慢し、その結果として何を失ったのか。そこに、その人物の値段が出る。
まず読んでおきたい作品
- ダシール・ハメット『マルタの鷹』
- サム・スペードは冷たい現実家に見えるが、欲望や情に流されるだけの男でもない。仕事、仲間、恋愛が衝突した時、どこで線を引くのか。その乾いた判断が面白い。
- レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』
- フィリップ・マーロウは、汚れた世界の中にいながら自分まで同じ色には染まらない。事件の複雑さより、依頼人や弱い立場の人物にどう接するかを見ると、人物像が立ち上がる。
- レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』
- 友情が損得を超えてしまった時、人はどこまで付き合うのか。マーロウの義理、人を見る目、そして裏切られた後の始末まで含めて、この教習所には格好の教材だ。
- ロス・マクドナルドのリュウ・アーチャーもの
- 事件の謎より、家族や過去の傷が現在をどう歪めるかに目を向ける。強引に正義を押しつけるより、人間の弱さを見ながら真実へ進むところが面白い。
乾いた文章は、感情がない文章じゃない。むしろ説明を減らすことで、行動の重さが前へ出る。ここはボギーの話し方にも通じる。何もかも言葉にすれば親切にはなるが、余韻まで消える。
名台詞を覚えるより、そいつが何をしたか覚えておけ。