コート、帽子、革靴、古い車、タイプライター、回転ダイヤルの電話、卓上ランプ、グラス。こういう物に惹かれる気持ちは分かる。形から入るのは悪くない。人は案外、身につけた物や身の回りの空気に引っ張られる。
- トレンチコートと帽子
- 便利さより、立ち姿を作る道具。だが、着ただけで無口になる必要はない。服が似合うかより、相手への礼が似合うかの方が長持ちする。
- タイプライターと紙
- 直せば痕跡が残る道具だ。今のデジタル環境とは違う不便さが、言葉を選ぶ感覚を思い出させる。
- 古い電話とデスク
- 待つしかない時間がある。即レスも既読もない。そんな時代の道具には、今とは違う間がある。
- 酒と煙草
- 映画の雰囲気としては強い。だが、健康や依存の問題まで込みで現実は別だ。雰囲気のために始めるものじゃない。
小道具が役に立つとすれば、自分の気分を少し整えるところまでだ。約束を守るのも、責任を引き受けるのも、道具は代わってくれない。
コートは買える。背中は売っていない。