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強い人間は、たしかにカッコいい。腕力がある、金がある、仕事ができる、言い返せる、勝負に勝てる。そういう力は役に立つし、持っているなら大いに使えばいい。

ただし、力そのものは人格じゃない。強いから正しいわけでもないし、勝ったから気高いわけでもない。むしろ、力がある時ほど卑怯は簡単になる。相手をねじ伏せられる人間が、ねじ伏せない。言い返せる人間が、必要以上には言わない。そこで初めて、その力の使い方に人柄が出る。

反対に、負けている時の方がもっと分かりやすい。勝てない。逃げ道も少ない。それでも嘘をつかない、弱い相手を踏まない、責任を押しつけない。そんな選択は、腕力では代わってくれない。

ハードボイルドは「強くなれ」と命じる思想じゃない。「持っている力をどう使うか。持っていない時にどう振る舞うか」を問う生き方だと思ってくれ。

無敵の男なら映画館にいる。ここで扱うのは、負けるかもしれない人間だ。