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ストイックな人は立派だ。欲望を抑え、鍛え、規律を守る。朝早く走る、酒を断つ、黙々と練習する。そういう姿には、たしかに美しさがある。

ただ、ハードボイルドとは少し違う。違いは「何のために耐えるのか」だ。苦しさに耐えること自体を目的にすると、最後は我慢比べになる。つらいほど偉い、弱音を吐かないほど立派だ、という話になったら危ない。

ハードボイルドのやせ我慢には、守りたいものが先にある。責任を逃れれば楽なのに引き受ける。恩を売れば得なのに黙って去る。怒鳴れば気が済むのに、相手の尊厳まで壊さない。耐えることが目的じゃない。自分の美学を安売りしないために、結果として少し我慢する。

だから、苦難そのものに価値があるわけじゃない。苦難はただ、普段は見えない自分の基準に照明を当てる。そこで何を選ぶかが見えるだけだ。

つらさを自慢し始めたら、我慢が急に安くなる。領収書はしまっておけ。